尖圭コンジローマは、日本国内でも大変多くの感染患者さんがいます。
当院でも日々多くの患者様の治療を行なっておりますが、今回は「尖圭コンジローマの特徴と治療方法」について解説していこうと思います。
目次
尖圭コンジローマの感染経路、潜伏期間、及び治療法について
尖圭コンジローマは、一般的に性感染症(STD)として知られていますが、正確にはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によって生じる疾患です。
感染経路と潜伏期間
尖圭コンジローマの主な感染経路は、性的接触を通じての感染です。特に、コンドームを使用しないいわゆる「生性交」や「オーラルセックス(フェラチオ)」を持った場合や複数のパートナーとの性的接触があった場合に感染リスクが高まります。しかし、性的接触だけでなく、ウイルスに汚染されたタオルや衣服を共有することによっても、稀ですが感染する可能性があります。
HPVの潜伏期間は非常に変わりやすく、感染後数週間から数年後まで症状が現れないこともあります。このため、感染してもすぐに自覚症状が現れないことが多く、注意が必要です。
発症後の症状と進行速度
尖圭コンジローマの初期症状として、皮膚や粘膜に小さな突起ができることが挙げられます。これはしばしば「いぼ」のような状態であり、色はピンクから茶色、あるいは肌色で、柔らかいことが多いです。場所としては、男性の場合は陰茎や肛門周辺、女性の場合は膣、子宮頸部、外陰部、肛門などに現れることが多いです。
この症状が放置されると、いぼは大きくなったり、広がったりする可能性があります。進行速度は個人差がありますが、免疫力が低下している場合や他のSTDとの同時感染がある場合は、進行が早まることも考えられます。
男性と女性の症状の違い
一般的に、尖圭コンジローマの症状は男女ともに似ています。しかし、発症部位や関連症状には差が見られます。女性の場合、子宮頸部に感染が広がると、子宮頸がんのリスクが高まることが知られています。これは、特定のHPVタイプによるものであり、尖圭コンジローマ自体ががんを引き起こすわけではありません。
男性の場合、陰茎や肛門に症状が現れることが多いですが、これらの部位でのがんリスクも考慮する必要があります。
尖圭コンジローマの形状や病変の特徴
- 形状: 尖圭コンジローマは、その名の通り「尖った」突起として皮膚や粘膜に現れます。これはカリフラワーのような外観を持つことが多いです。
- 色: 肌色から褐色まで様々です。病変の部位や個人の肌の色によっても変わります。
- 大きさ: 数ミリメートルから数センチメートルまでと、大きさは様々です。放置されると大きくなる可能性があります。
- 病変の部位: 主に生殖器や肛門周辺に現れますが、口腔内や喉にも出現することがあります。
さまざまな形状のイボ
肛門周囲のイボ
HPVとその種類
ヒトパピローマウイルス(HPV)には100種類以上が存在し、その中で特定のタイプが尖圭コンジローマの原因となります。特にHPV-6およびHPV-11は尖圭コンジローマの大部分を引き起こすとされています。一方、HPV-16やHPV-18などの他のタイプは、子宮頸がんや他のがんのリスクが関連していることで知られています。
他のHPVによる病変
HPVによる病変は尖圭コンジローマだけではありません。例として、平坦なコンジローマや淡いブラウンの斑点、または子宮頸部の異常細胞などが挙げられます。
治療方法
尖圭コンジローマの治療方法は、いぼの大きさ、数、場所によって異なります。以下は、主な治療方法を示します:
- 液体窒素治療: 病変部位を冷凍して除去する方法。
治療期間が長期化するケースが多く大変。 - 外科的切除: 電気メスや炭酸ガスレーザーを使用して、病変部分を切除する方法。
一度の治療で全て除去可能。当院での治療法
- ベセルナクリーム治療: クリームやゲルを使用して、病変部位に直接塗布する方法。
治療期間が長期化するケースが多く大変。また、クリームにより皮膚が炎症を起こし、症状が広がり、悪化するリスクがある。
- 免疫応答改善薬: 免疫システムを活性化させることで、ウイルスに対する体の反応を向上させる治療
唯一の予防策はワクチン摂取
日本で受けられるHPVワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)による感染とそれに関連する疾患、特に子宮頸がんのリスクを低減することを目的としています。以下は、日本で使用されている主なHPVワクチンに関する情報を詳しく解説します(情報は2022年1月時点のものです)。
1. シルガード9
- 保護対象: HPVのタイプ6, 11, 16, 18, 31, 33, 45, 52, 58に対する保護。
- 特徴: シルガード9は9価のワクチンで、主に子宮頸がんを引き起こすリスクが高いタイプを含む9種類のHPVに対する予防効果があります。さらに、外陰部がん、膣がん、尖圭コンジローマのリスクも低減します。
- 接種年齢: 9歳~45歳までの男女。特に、12歳~16歳の女子に接種が推奨されています。
- 接種回数: 9歳~14歳までの場合は2回、15歳以上は3回の接種が必要。
2. サーバリックス(Cervarix)
- 保護対象: HPVのタイプ16と18に対する保護。
- 特徴: サーバリックスは2価のワクチンで、主に子宮頸がんを引き起こすリスクが最も高い2種類のHPVに対する予防効果があります。
- 接種年齢: 主に女性向け。日本では、12歳~16歳の女子に接種が推奨されています。
- 接種回数: 通常3回の接種が必要。
注意点
- ワクチンはHPV感染の予防に効果がありますが、既に感染しているタイプのHPVに対する治療効果はありません。
- HPVワクチンの接種は子宮頸がんのスクリーニング(検診)の代わりとなるものではありません。ワクチン接種後も定期的なスクリーニングを受けることが推奨されています。
- 一部の人にはワクチン接種による副作用が報告されているため、接種前に医師としっかりと相談することが重要です。
感染リスクを低減するためには、適切な性教育やワクチン接種も考慮されるべきです。
尖圭コンジローマは、適切な治療と予防によって管理することができます。症状が現れた場合や不安を感じる場合は、すぐにご相談ください。
結論
尖圭コンジローマは特定のHPVタイプによって引き起こされる疾患であり、その形状や病変は患者やウイルスのタイプによって異なります。病変を発見した場合や不安を感じる場合は、早急にご相談ください。